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常に戦士のままで


by Iulianus
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届いた本

クリストファー・ドーソン 『ヨーロッパの形成 ヨーロッパ統一史叙説』 野口啓祐、草深武、熊倉庸介共訳、創文社、1988年

 20世紀前半のカトリック文化史家として有名なドーソンの"The Making of Europe"の翻訳。原著の翻訳は野口の個人訳で、昭和19年に富山房から出ているはず。
 ドーソンの著作は戦前から戦後にかけてかなり翻訳されている。中世史関係では、『聖アウグスティヌスとその時代』(服部英次郎訳)、『中世文化史』や『中世期の基督教』と『中世のキリスト教と文化』(ともに野口啓祐訳)、『中世ヨーロッパ文化史』(創文社、1995年)とか、あるいは近代批判としては『進歩と宗教』とか『近代のジレンマ』とか。
 これらの翻訳にすべてを目を通しているわけではない。もちろんここに挙げた中世史関係のものには全て目を通しているが。どうも感じからして、近代批判の視座として中世を取り上げているようだ。そういう点ではロマン主義的な視点ともいえるかもしれない。
 『ヨーロッパの形成』では、中世が暗黒時代であったということを批判して、この時代がヨーロッパの基礎を作り上げた創造的な時代であったということを述べようとしている。原著の出版が、1932年ということから考えると、第一次世界大戦・大恐慌という時代を背景にヨーロッパの没落という危機感に対して書かれたものといえるかもしれない。
 この本は古代末期からヴァイキングの侵入と北欧のカトリック化まで、ほぼ11世紀のはじめくらいまでの時代を扱っている。
 この翻訳で気になるのは、昭和19年に富山房から出されたものへの言及がいっさいないこと。確かに、1988年の出版時では野口はすでに鬼籍に入っているので、その辺りの事情が分からなかったのかもしれないが、不親切。
by iulianus | 2009-02-20 15:01 | Libri